相続の手続きは、役所への届出だけで終わらず、誰が受け継ぐかの確認、財産と借金の調査、分け方の話し合い、税金、名義変更まで続きます。ひとつずつ見ると複雑に感じますが、順番は「期限が短いものを先に」「全員で決めるものは調査のあとに」と考えると見通しが立ちます。亡くなった日からの主な期限は相続の期限チェックで日付ごとに確認できます。
相続手続きの順番を一覧で見る
| 時期の目安 | 主な手続き | 先に見たい点 |
|---|---|---|
| 亡くなってすぐ〜数週間 | 遺言書の有無を探す、必要書類を集める、口座や保険の資料を保管する | 封筒や通知書を捨てず、名義や残高の手がかりを残す |
| 3か月以内 | 相続人を確かめる、財産と借金を調べる、相続放棄するか考える | 借入や未払金、保証の有無まで含めて確認する |
| 4か月〜10か月 | 亡くなった方の所得税の手続きの要否を見る、遺産分割を話し合う、相続税が関係するか確かめる | 分け方を決める前に税金の確認点を洗い出す |
| 分割後〜3年以内 | 預金・証券・車・不動産の名義変更を進める | 不動産の相続登記を後回しにしない |
この表は一般的な流れです。遺言書が見つかったときや、借金が多いおそれがあるときは、分割の話し合いより前に確認する事項が増えます。まず全体像をつかみ、そのうえで短い期限から順番に処理していくと進めやすくなります。亡くなった直後の届出については7日と14日の期限にまとめています。
最初の3か月で確認すること
相続人と遺言書の有無を確かめる
はじめにするのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、配偶者、子、父母、兄弟姉妹など、誰が相続人になるかを確かめることです。ここがずれると、その後の話し合いや名義変更が止まります。関係が複雑なときは相続まるごと診断で、相続人の範囲、法定相続分という法律上の目安の取り分、基礎控除額、主な期限をまとめて確認できます。
あわせて、遺言書の有無も見ます。公正証書の遺言があるなら、その内容に沿って進む場面が多くなります。自筆の遺言書らしきものがあるときは、開封前に必要な手続きの有無を確認します。遺言の内容によっては、相続人全員で遺産分割をしなくても手続きが進むことがあります。
財産と借金を並べて把握する
預金通帳、不動産の固定資産税の書類、証券会社からの郵便、保険証券、借入の返済予定表などを集め、プラスの財産とマイナスの財産を分けて書き出します。見落としやすいのは、クレジットの未払金、連帯保証、亡くなった方名義の口座が複数あるケースです。分け方を決める前に一覧にしておくと、あとから特定の財産だけ抜ける事態を防ぎやすくなります。
相続放棄を考えるなら期限を先に見る
借金が多いかもしれないときは、相続放棄するかを3か月以内に考える必要があります(民法915条1項)。亡くなった日から自動的に3か月と決めつけず、数え方に迷うこともあるため、相続放棄の期限3か月はいつから数えるかで考え方を確認しておくと、判断の前提をそろえられます。調査に時間がかかる見込みなら、資料を集めた日付や照会した内容を残しておくと、後で経過を説明するときにも役立ちます。
4か月から10か月ごろに進めること
亡くなった方の所得税の手続きがいるか見る
会社員で年末調整が済んでいるだけなら不要なこともありますが、事業収入や不動産収入があった場合などは、4か月以内に亡くなった方の所得税の手続きが必要になることがあります(所得税法125条)。これを準確定申告といいます。必要になる人の範囲と進め方は準確定申告が必要な人と、4か月の期限にまとめています。
遺産分割の話し合いを進める
相続人と財産が固まったら、誰が何を受け継ぐかを話し合います。預金の分け方だけでなく、不動産を誰が持つか、代わりに現金を渡すか、未払いの費用をどの財産から出すかも論点になります。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書に書くことで確認項目を見ておくと、作り直しの原因になりやすい書き漏らしを減らせます。
相続税が関係するかを確かめる
相続税の申告期限は10か月です(相続税法27条1項)。ただし、すべての相続で申告が必要になるわけではありません。まずは基礎控除があり、3,000万円に600万円×法定相続人の数を足した額までは、相続税がかからない仕組みです(相続税法15条)。財産の概算が見えてきた段階で、申告が必要かどうかを見ます。配偶者がいる場合や、生命保険金の非課税枠として500万円×法定相続人の数が関係する場合もあるため(相続税法12条1項5号)、資料をそろえた時点で確認しておくと流れをつかみやすくなります。
分割後に進める名義変更と相続登記
遺産分割がまとまったら、預金、証券、車、会員権、不動産などの名義変更に進みます。窓口ごとに必要書類が違うため、戸籍、印鑑証明書、遺産分割協議書、遺言書など、使い回す書類をひとまとめにして管理すると、途中で探し直す手間を減らせます。口座解約だけ先に進めたくなることもありますが、全体の資料をそろえてから着手したほうが抜け漏れは少なくなります。提出先が多いときは、戸籍の束を1枚にまとめられる法定相続情報一覧図を先に作っておく方法もあります。
不動産があるときは、相続登記を後回しにしないことが必要です。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になることがあります(不動産登記法76条の2)。売却や賃貸の予定がなくても、名義が古いままだと次の相続で関係者が増え、必要書類も多くなります。
順番に迷ったときの見直し方
実際の相続では、口座解約を急ぐ家族がいる一方で、不動産の資料がすぐそろわないこともあります。そんなときは、①3か月・4か月・10か月・3年の期限があるもの、②相続人全員の確認が必要なもの、③分割が決まってから動くもの、の3つに分けて並べ直すと、次に何をするかが見えやすくなります。まず期限を外さず、その後に話し合いと名義変更を重ねる順番で考えると、相続手続き全体を落ち着いて追いやすくなります。何を外へ頼むかの切り分けは相続手続きは誰に頼む?司法書士・行政書士・税理士にまとめています。一人暮らしの方が亡くなった場合の、葬儀や住まいの対応と相続手続きの切り分けは一人暮らしの死後事務は誰がやる?にまとめています。
