相続では、銀行の手続き、不動産の名義変更、相続税の確認など、窓口がいくつも出てきます。そのため、最初に「誰に頼めばよいのか」で迷いやすいものです。依頼先は資格の名前だけで決めるより、いま必要な手続きを分けて考えると整理できます。司法書士は不動産の名義変更、行政書士は書類作成の支え、税理士は相続税の確認や申告、という形で役割を見ると全体像がつかめます。
相続手続きは、することごとに頼み先が変わります
同じ相続でも、必要になる知識は一つではありません。土地や建物の名義を変えるのか、預貯金の解約書類をそろえるのか、相続税の申告が必要かを見るのかで、相談先は変わります。まずは相続手続きの順番一覧と進め方で全体の流れを見て、いま何から着手する段階かを確かめると整理しやすいです。
次に、亡くなった日から数える期限を確認します。相続税の申告は10か月(相続税法27条1項)、相続登記は3年(不動産登記法76条の2)です。日付を先に押さえたいときは、相続の期限チェックに亡くなった日を入れると、8つの期限が実際の日付で並びます。
- 不動産の名義変更を進めたいときは司法書士
- 協議書や金融機関提出書類の整理をしたいときは行政書士
- 相続税の申告が必要か確認したいときは税理士
この切り分けで、依頼先をかなり絞れます。反対に、相続人どうしで取り分の話し合いが止まっている場合は、書類作成だけでは進まないこともあるため、相談窓口の確認を先に考えます。
司法書士に頼むことが多いのは不動産の名義変更です
司法書士が中心になるのは、不動産の相続登記です。亡くなった方の名義になっている土地や建物を、相続人の名義へ変える手続きで、戸籍、住民票、固定資産税評価証明書などをそろえて申請します。自宅や土地が遺産に入っているなら、司法書士を候補に入れる流れが自然です。
また、司法書士に戸籍収集や法定相続情報一覧図の準備をあわせて頼むケースもあります。自分で集めるときの進め方は相続で使う戸籍の集め方と、法定相続情報一覧図にまとめています。相続人が多いと戸籍が増えやすく、銀行や証券会社でも同じ資料の提出を求められるため、最初の整理をまとめて進めたい場面に向いています。自分で進める場合の見通しは、相続登記は自分でできる?進め方と注意点で確認できます。
- 遺産の中に土地や建物がある
- 戸籍が多く、集め方に不安がある
- 平日に法務局へ行く時間を取りにくい
こうした事情があると、司法書士に頼む意味が見えやすくなります。
行政書士は書類作成や提出準備の整理を考える場面があります
行政書士は、相続関係を整理した図、遺産分割協議書の案、金融機関に出す書類の準備など、書類作成の面で支えになることがあります。預貯金の解約や名義変更で、何をそろえるのかを順番立てて進めたいときに候補になります。
一方で、相続人どうしの交渉を代わって進めてほしい、取り分の対立を調整してほしい、といった場面は別に考える必要があります。行政書士に頼める範囲は、あくまで書類作成が中心だからです。相続人の代理として交渉や調停を進められるのは弁護士で、行政書士や司法書士にはできません。協議書を自分たちでまとめる前に確認したいときは、遺産分割協議書に書くことで、書き漏らしになりやすい項目を33のチェックで見直せます。
- 相続人や分け方に大きな対立はない
- 金融機関へ出す書類の整理から始めたい
- 登記や税申告より前に、まず協議書を形にしたい
このような段階なら、行政書士に頼む内容を具体的に考えやすいでしょう。
税理士は相続税の確認や申告が視野に入るときに考えます
税理士を考えるのは、相続税の申告が必要かどうかを見たいときです。まず確認するのは基礎控除で、3,000万円に法定相続人1人につき600万円を足した額です(相続税法15条)。考え方を先に押さえるなら、相続税の基礎控除、計算方法を確認で流れをつかめます。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
財産の合計がこの基礎控除額を超える可能性があるなら、相続税の申告を見据えて税理士を検討します。特に、不動産が複数ある、非上場株式がある、亡くなる前の贈与の確認が必要、生命保険金の非課税枠を整理したい、といった場合は、税金の見方が加わります。反対に、基礎控除の範囲内で財産の種類も少ないなら、税理士の優先度は下がることがあります。
税理士に頼むか迷うときは、税額の目安を急いで出すより、まず「申告が必要になりそうか」を見分けるほうが先です。その判断材料をそろえるだけでも、次の動きが決めやすくなります。
迷ったときは、期限と財産の種類から切り分けます
依頼先を一つに決められないときは、次の順で整理すると進めやすいです。
- 亡くなった日から数える期限を確認する
- 不動産があるかどうかを見る
- 財産の合計が基礎控除額を超えそうか確かめる
- 相続人どうしの話し合いがまとまっているか整理する
不動産が中心なら司法書士、書類の取りまとめが中心なら行政書士、相続税の確認や申告が必要なら税理士、という形で候補を分けられます。まずは手続きの全体と期限を並べ、そのうえで何を外へ頼むかを決めると、動く順番がはっきりします。なお、話し合いが進まない場合は、無理に書類作成だけでまとめようとせず、相談窓口の案内も含めて整理する方法があります。
