相続登記を自分でできるかは、多くの方が最初に気になる点です。結論からいうと、申請そのものはご自身でも行えます。ただし、必要書類がはっきりしているか、誰が不動産を受け継ぐか決まっているかで、かかる手間は大きく変わります。ここでは、義務化の期限を踏まえながら、自分で進めやすい場合と、途中で確認が必要になりやすい場面を落ち着いて整理します。全体の流れを先に見たいときは、相続手続きの順番一覧と進め方で、登記がどの段階に出てくるかを確認できます。
相続登記は自分でも申請できます
相続登記は、必ずしも代理人に依頼しなければならない手続きではありません。書類をそろえ、申請内容を確認したうえで、ご自身で法務局へ申請することは可能です。相続による登記は、不動産を取得する相続人が単独で申請でき、ほかの相続人と共同で申請する必要はありません(不動産登記法63条2項)。
一方で、相続登記には期限があります。2024年4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2)。数え始める日の考え方は相続登記の義務化と、3年の数え方にまとめています。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。さらに、2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに申請が必要です。
そのため、「自分でできるか」を考えるときは、まず期限に間に合うかを見ておくと整理しやすくなります。相続の期限チェックに亡くなった日を入れると、相続登記を含む主な期限が実際の日付で並びます。
自分で進める前に確認したい3つのこと
誰が相続人になるか
最初に確かめたいのは、相続人の範囲です。戸籍を集めて、亡くなった方の出生から死亡までのつながりを確認し、現在の相続人を確定します。配偶者と子だけの相続であれば見通しを立てやすいことがありますが、子がすでに亡くなっている場合や、兄弟姉妹が相続人になる場合は、確認する戸籍が増えます。
ご家族の関係から全体像を先につかみたいときは、相続まるごと診断で、相続人や法定相続分、必要な手続きの順番をまとめて確認できます。
誰が不動産を受け継ぐか
次に、対象の不動産を誰の名義にするかを決めます。相続人が1人だけなら判断しやすいですが、複数いる場合は、遺言書で決まっているか、遺産分割の話し合いが必要かで準備が変わります。話し合いで決めるときは、内容を遺産分割協議書にまとめるのが通常です。書き漏れがあると作り直しになるため、遺産分割協議書に書くことで、確認項目を先に見ておくと判断しやすくなります。
どの不動産が対象か
土地と建物が別々に登記されていることもあるため、「自宅一つ」と思っていても、実際には複数の登記が動くことがあります。申請では、不動産の表示を登記簿どおりに確認する必要があります。固定資産税の通知だけで進めるのではなく、対象の土地と建物が漏れていないかを見直しておくと、後で手戻りを減らせます。地番や家屋番号の確かめ方は相続で使う登記事項証明書の取り方で整理しています。マンションの場合は相続したマンションの名義変更手続きも参考になります。
自分で進めやすいケースと手が止まりやすいケース
自分で進めやすいケース
ご自身で進めやすいのは、相続人が少なく、誰が不動産を取得するかがすでに決まっている場合です。たとえば、相続人が1人である、遺言書で取得する人が明確である、対象不動産が少なく把握しやすい、といった場面では、確認事項が比較的絞られます。
また、亡くなった方の戸籍や住民票関係の資料が集まりやすく、登記簿上の情報とのつながりが確認しやすいと、作業は進めやすくなります。必要書類を一つずつ見比べていける状態なら、自分で取り組む余地は十分あります。何をそろえるかと費用は相続登記に必要な書類と、かかる費用で確認できます。
手が止まりやすいケース
反対に、相続人が多い、代襲相続がある、不動産が各地にある、登記簿上の住所と亡くなった時点の住所のつながりを追う必要がある、といった場合は、途中で確認事項が増えます。遺産分割の話し合いがまとまっていない段階でも、所有者を誰にするか決めきれないため、申請の前提が整いません。
こうした場面では、書類を集めるだけでも時間がかかります。自分で進めるかどうかは、「書類の意味が分かるか」よりも、「必要な前提がそろっているか」で見たほうが実情に合います。
期限に間に合わないときは相続人申告登記もあります
相続人の調査や遺産分割に時間がかかり、すぐに正式な相続登記ができないこともあります。そのようなときに検討されるのが相続人申告登記です。相続人申告登記は、登記簿に相続人から申出があったことを付記する仕組みです(不動産登記法76条の3)。
この仕組みは、期限までに最終的な名義変更が難しいときの当面の対応として位置づけられています。ただし、相続人申告登記をしただけで、不動産を取得する人が最終的に決まるわけではありません。遺産分割で名義人が定まったら、その内容に沿った相続登記は別に必要です。
2024年4月1日より前の相続であっても、義務化の対象になる不動産はあります。昔の相続だから急がなくてよいとはいえません。期限までの残りを見ながら、正式な申請まで進めるのか、先に相続人申告登記を考えるのかを整理していくことになります。
迷ったときは、何が決まっていないかを切り分けます
自分でできるか迷うときは、「書類の集め方が分からない」のか、「相続人の範囲が固まっていない」のか、「遺産分割がまだ決まっていない」のかを切り分けると、次に取る行動が見えます。書類の不足だけなら確認しながら進められることがありますが、誰が不動産を受け継ぐか自体が未定なら、申請の前に整理すべき点があります。
相続登記はご自身で進められる場合もありますが、すべてのケースで同じ負担になるわけではありません。義務化の期限を確認し、相続人と不動産の範囲、遺産分割の要否を順に見ていくと、無理のない進め方を選びやすくなります。
