相続登記では、亡くなった方から相続人へ名義を移すために、登記簿に載っている人と亡くなった方が同じ人だと分かる資料をそろえます。ところが、不動産を取得してから長い年月がたっていると、登記簿の住所が古く、最後の住所とそのままではつながらないことがあります。さらに住民票の除票が取れないと、そこで手が止まります。ここでは、何が足りないのかを切り分けながら、集める資料の考え方を順に整理します。
相続登記でいう「住所がつながらない」とは
この場面で困るのは、登記簿に記載された住所と、亡くなった方の死亡時点に近い住所が一致しないことです。たとえば、登記簿には昔の住所が残っていて、亡くなったときの住民票の除票には別の住所が載っている、という状態です。
相続登記では、氏名が同じというだけでは足りず、住所の移り変わりも見て、登記名義人と亡くなった方が同一人物かを確かめます。そのため、途中の住所の移転が資料で追えないと、「つながらない」と言われます。
ただ、除票がないから直ちに申請できないと決まるわけではありません。古い記録が残っていない事情は珍しくなく、ほかの公的な資料を組み合わせて確認できることもあります。大事なのは、どの時点からどの時点までが証明できていて、どこに空白があるかを先に見つけることです。
先に見比べたい情報
集める前に、まず次の情報を並べて確認します。最初にずれの位置が分かると、必要な資料の方向が定まります。
- 登記簿にある亡くなった方の住所と氏名
- 亡くなった方の最後の住所と本籍
- 住民票の除票や戸籍の附票で、どこまで前の住所をたどれるか
登記簿の内容は、相続で使う登記事項証明書の取り方を見ながら確認しておくと、ずれの位置が早く分かります。ここで見たいのは、不動産の内容だけでなく、名義人の住所がどのように記録されているかです。
次に、手元の戸籍と住民票関係の書類で、最後の住所から前の住所へさかのぼれるかを見ます。戸籍の附票に前住所が記載されていれば、そのまま登記簿の住所へつながることがあります。反対に、途中で記録が切れていれば、その区間を埋める資料を探すことになります。戸籍と住民票関係でそろえる書類の全体は、相続登記に必要な書類と費用にまとめています。
この確認では、住所だけでなく本籍の移動にも注意が必要です。戸籍の附票は戸籍を単位に作られるため(住民基本台帳法16条1項)、本籍を移していると、古い本籍地の附票が別に必要になることがあります。住所が追えないと思っていたら、実際には本籍違いで附票が分かれていただけ、ということもあります。
除票がないときの考え方
まずは戸籍の附票で追えるかを見る
住民票の除票が取れないときでも、戸籍の附票で住所の履歴が確認できる場合があります。附票には、住所と住所を定めた年月日が記録されるため(住民基本台帳法17条)、登記簿の古い住所と最後の住所の間を埋められることがあります。
本籍を何度か移している場合は、現在の戸籍だけでは足りません。除籍になった戸籍や改製前の戸籍に対応する附票が必要になることもあります。戸籍はそろっていても附票を取り忘れると、住所の流れだけ確認できないままになります。戸籍と附票は別の書類として数えておきます。
保存が終わっているときは、空白の場所をはっきりさせる
古い除票や附票は、市区町村で保存期間が過ぎていると交付されないことがあります。住民票の除票と戸籍の附票の除票は、2019年6月20日からは消除した日から150年間保存されます(住民基本台帳法施行令34条1項)。それより前の保存期間は5年で、すでに廃棄された分は今から取り直せません。その場合は、「取れない」という事実だけで止まらず、どの住所から先が残っていないのかをはっきりさせます。申請では、その空白を別の公的資料でどこまで補えるかがポイントになります。
実際には、旧住所地や本籍地で別の附票が取れることもありますし、保存されていないことを示す書面(廃棄証明や不在籍・不在住証明)が出ることもあります。法務局の取扱いでは、登記名義人の登記済証(いわゆる権利証)や登記識別情報があれば、住所の空白があっても同一人と確かめる材料になります。それも無いときに、相続人全員の上申書を求められることがあります。また、法務局から補足資料の提出を求められることもあります。求められる内容は、登記簿の記載、住所移転の回数、同姓同名の可能性などで変わるため、一般論だけで決め打ちしないほうが安全です。
そのため、手元にある戸籍、附票、除票、登記事項証明書を並べて、どこまでは証明できるかを書き出してから管轄の法務局に確認すると、話が通りやすくなります。資料を一つずつ追加で集めるより、最初に全体像を見せたほうが、必要な補足がはっきりします。
書類が足りないときは、申請の形も含めて考える
住所のつながりに時間がかかると、相続人の確定や遺産の分け方の確認も同時に進める必要が出てきます。遺産分割が必要なら、遺産分割協議書に書くことで、登記に使う不動産の表示や相続人の記載漏れがないかを先に見直せます。住所の資料だけ整っても、協議書の内容が合わないと申請を出し直すことがあるためです。
相続登記は、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。書類集めに時間がかかりそうなときほど、期限との距離を先に見ておきます。記事の途中に表示される相続登記チェックで、今の状況に応じた流れを整理しておくと、どの段階で何をそろえるかが分かります。
迷ったときの進め方
- 登記事項証明書で、登記簿に残っている住所と氏名を確認する
- 戸籍一式に加えて、現在の戸籍だけでなく古い戸籍に対応する附票がないか調べる
- 最後の住所までの流れを紙に書き出し、つながる部分と切れる部分を分ける
- 切れている区間について、旧住所地や本籍地で取れる資料がないか確認する
- 補足資料が必要になりそうなら、申請前に法務局へ事情を示して確認する
相続登記の全体の流れは、相続登記は自分でできる?進め方と注意点でも整理できます。住所の問題だけに見えても、相続人の確認や必要書類の集め方まで一緒に見ておくと、途中で戻りにくくなります。
なお、書類集めに時間がかかり、通常の相続登記の準備がすぐには整わない場合には、相続人申告登記とは何か、使う場面と注意点も確認しておくと、取り得る方法の幅が分かります。期限内に申告登記をしておけば、3年の義務は果たしたことになります(不動産登記法76条の3第2項)。
住所がつながらない、除票がないという状況でも、必要なのは「足りない資料をやみくもに探すこと」ではなく、「どこまで確認できて、どこが空いているか」を見える形にすることです。判断に迷うときは、相続手続きを扱う相談窓口をご案内しています。
