相続税の基礎控除は、相続税がかかるかを見分ける最初の基準です。式はシンプルですが、実際には「法定相続人の数」をどう数えるかで迷う方が少なくありません。ここでは、相続税法15条の式に沿って、計算の順番と見落としやすい点を整理します。
相続税の基礎控除はこの式で計算します
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法15条)。まず法定相続人の数を決め、その人数を式に入れます。出てきた基礎控除額と、相続税の対象になる財産の合計を比べて、申告が関わるかを見ていきます。
ここで押さえておきたいのは、式に入る人数は「実際に財産を受け取る人の数」ではないことです。遺言で一人が多く受け取る場合や、話し合いで一人が取得する場合でも、基礎控除の計算では法定相続人の数を使います。先に分け方を考えるより、人数を確かめてから式に当てはめるほうが順番として分かりやすいです。
だれが法定相続人になるか迷うときは、相続まるごと診断で、相続人の候補、法定相続分、基礎控除額をまとめて確認できます。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
| 6人 | 6,600万円 |
人数が決まれば、まずは預貯金や不動産などの資料を見ながら、おおよその合計が基礎控除額を超えるかを確かめます。本文の途中に入る「相続税がかかるか調べる」も、この段階の確認に向いています。超えそうなときに自分で申告を進めるかの判断は相続税の申告は自分でできるかで整理しています。
法定相続人の数は、受け取る人の数と同じとは限りません
基礎控除の計算で行き違いが起こりやすいのは、財産を受け取る予定の人の数と、税金の計算で使う法定相続人の数を同じにしてしまう場面です。だれがどれだけ取得するかは遺言や遺産分割で決まりますが、基礎控除の式は別の考え方で動きます。家族の話し合いがまだ終わっていなくても、先に人数だけは確認できます。
遺言や遺産分割の内容で人数は変わりません
たとえば、遺言で特定の人に多くの財産を渡す内容になっていても、それだけで基礎控除の人数が増減するわけではありません。遺産分割の話し合いで「今回は受け取らない」と決めた人がいても、税金の計算で使う人数は別に考えます。分け方の結論と、人数の数え方を混ぜないことがポイントです。
相続放棄があっても、人数の数え方はそのままになることがあります
国税庁の相続税がかかる場合の案内では、相続放棄があっても、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えるとされています。放棄した人がいると、実際の手続きでは次にだれが相続人になるかを別に確認しなければなりません。流れを見直したいときは、相続放棄したら次は誰が相続人かで関係を追えます。
養子がいるときは、全員をそのまま入れない場合があります
養子がいるご家庭では、戸籍に載っている人数をそのまま全部入れるとは限りません。基礎控除の計算では、亡くなった方に実子がいるときは養子1人まで、実子がいないときは養子2人までとして数えるのが原則です。養子縁組が複数ある場合や、家族関係の整理に時間がかかりそうな場合は、財産の確認より先に戸籍関係の資料をそろえておくと話が進めやすくなります。実子とみなす養子や相続放棄との関係は相続税の基礎控除で養子は何人まで数えるかで整理しています。
計算は「人数を決める」「財産を並べる」「比べる」の順で進めます
基礎控除の計算は、次の順で進めると途中で戻りにくくなります。
- 法定相続人の数を確認する 亡くなった方の戸籍と、相続人になる可能性がある方の関係を見て、人数を確定させます。相続放棄や養子が関わると数え方が変わるので、ここを飛ばして財産の集計から始めないほうが安全です。
- 財産の資料を集めて、おおよその合計を出す 預貯金の残高、証券会社の書類、不動産に関する資料、保険の通知などを並べます。売れそうな金額や家族の記憶だけで決めるのではなく、手元の資料を基準に一覧を作ると見落としを減らせます。
- 基礎控除額と比べる 合計が基礎控除額を超えるかを見ます。この時点では税額まで出す必要はありません。まずは、相続税の申告を考える段階に入るかどうかを切り分けます。
どの数字から見ればよいか迷うときは、相続税がかかるかは基礎控除で確認もあわせて読むと、確認の順番をつかみやすくなります。
基礎控除の計算だけでは決まらないこともあります
財産の評価は、見た目の金額と一致しない場合があります
基礎控除の式が分かっても、財産の合計は単純な足し算で終わらないことがあります。預貯金のように金額が把握しやすいものもあれば、不動産のように評価の考え方を確認するものもあります。生命保険金など、受け取った金額をそのまま合計しない場合もあるため、基礎控除を超えるかぎりぎりのところでは、資料をそろえて丁寧に見たほうが確実です。生命保険金の非課税枠の見方は生命保険金の相続税、非課税枠の基本にまとめています。
税金がかからなくても、相続の手続きは別に進みます
基礎控除の範囲内で相続税の申告が関わらないとしても、預貯金の解約、不動産の名義変更、遺産分割の話し合いは残ります。税金の要否と、相続全体の手続きは同じではありません。全体を見渡したいときは、相続手続きの順番一覧と進め方で、何から着手するかを整理できます。基礎控除を超えたあとに各人の税額から引く控除は相続税の未成年者控除と障害者控除で整理しています。
相続税の基礎控除は、式そのものより人数の数え方で迷いやすい項目です。まず法定相続人の数を確かめ、そのあとで財産の合計と比べてください。判断が分かれる部分は、相談窓口をご案内している先で確認する方法もあります。
