相続税の申告は自分でできる?進め方と判断の目安

相続税の申告は、必ずしも全員が専門家に依頼しなければ進められない手続きではありません。一方で、期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。自分でできるかを考えるときは、まず申告が必要かどうか、そのうえで判断が難しい財産や特例があるかを分けて確認すると、全体像がつかめます。

相続税の申告を自分で進めやすい場合

自分で進めやすいのは、財産の種類が多すぎず、預貯金や上場株式のように資料を集めやすいものが中心のときです。戸籍や残高証明書、保険の支払通知など、必要書類の見当がついていて、家族のあいだでも分け方の話し合いに見通しがあるなら、作業の流れが立ちます。

反対に、土地の確認が必要な不動産、亡くなる前の贈与との関係を見直す財産、名義だけでは判断しにくいものがあると、自分で整理する負担は重くなります。相続税の申告で手間がかかるのは、申告書に数字を書く場面よりも、その前に資料をそろえ、どのルールが関係するかを確かめる場面です。

そのため、「自分で申告書を書けるか」だけで決めるより、財産の一覧を作れるか、必要な資料を期限までに集められそうかで考えるほうが現実的です。最初にここを見ておくと、途中で止まりやすい点も先に見えます。

まずは申告が必要かを基礎控除で確認

相続税は、財産の合計が基礎控除額を超えるかが出発点です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します(相続税法15条)。人数ごとの額は、相続税の基礎控除、計算方法を確認でも整理できます。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

ここで急いで細かな計算に入るより、まずは財産の種類を書き出します。預貯金、不動産、有価証券、生命保険金、そのほか亡くなった方の財産を分けて並べるだけでも、申告が必要かどうかの見当が付きます。

生命保険金を受け取っている場合は、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります(相続税法12条1項5号)。保険があると財産の見え方が変わるので、生命保険金の相続税、非課税枠の基本で先に確かめておくと整理しやすいです。

基礎控除を超えるか迷う段階では、記事の途中に表示される道具で、ご家族の構成と財産のおおよその合計を入れてみる方法もあります。申告が必要になりそうかが分かると、どの資料から集めるかが決まります。

自分で進めるときの順番

相続人と期限を先に確かめる

誰が相続人になるかで、法定相続人の数も基礎控除額も変わります。戸籍を取り始める前に、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹のうち、どこまで確認が必要かを整理しておくと、集める書類の範囲が見えます。期限は10か月で、申告と納税の先は亡くなった方の住所地を管轄する税務署です。数え方は相続税の申告期限は10か月、いつまでかにまとめています。相続の期限チェックに亡くなった日を入れ、相続税の申告期限を実際の日付で見ておくと予定を組みやすくなります。

財産と債務の資料をまとめる

次に、通帳、残高証明書、証券会社からの書類、固定資産税の通知、保険の支払通知などを集めます。金額そのものだけでなく、何の財産か、どの書類で確かめるかが分かるように並べておくと、後から見返せます。自分用の一覧表を一枚作り、資料の有無を書き込むと、取り寄せ漏れに気付きやすくなります。

分け方と特例の見通しを立てる

相続税は、財産の分け方によって確認する点が変わります。特に自宅や事業用の土地がある場合は、小規模宅地等の特例の条件を確認し、誰が取得する予定か、利用状況がどうなっているかを早めに見ておきたいところです。

また、配偶者が財産を受け継ぐときは、1億6,000万円または法定相続分までの税額軽減という枠があります(相続税法19条の2)。こうした特例が関係すると、単に財産を数えるだけでは進めにくくなるため、資料を集める段階から「どの特例に触れそうか」を横にメモしておくと、確認の順番が整います。

自分で進めにくい場面

申告そのものは自分で行うとしても、すべての判断を一人で抱えないほうがよい場面があります。たとえば、不動産が複数ある、家族のあいだで分け方がまだ決まっていない、亡くなる前の贈与との関係を確かめたい、相続時精算課税の2,500万円や暦年課税の110万円の扱いが気になる、といったときです。

こうしたケースでは、書類集めまでは自分で進められても、どのルールが当てはまるかの整理に時間がかかります。迷う点がいくつもあるまま作業を進めるより、「戸籍はそろった」「預貯金は一覧にした」「土地の確認が残っている」のように、終わった部分と残っている部分を分けて考えるほうが手を止めずに済みます。

自分でできるかどうかは、最初から白黒を付けなくても構いません。途中まで自分で進めて、判断が難しい論点だけ整理する考え方でも十分です。相続税の申告は、資料の所在と確認事項が見えてくるだけでも進み具合が大きく変わります。

10か月に間に合わせるための進め方

期限に余裕があるように見えても、戸籍の収集、財産の確認、分け方の相談はそれぞれ時間がかかります。自分で進めるなら、次の順番で動くと無理が少なくなります。

  1. 最初に、亡くなった方の戸籍と相続人の範囲を確認し、法定相続人の数を固めます。
  2. 次に、預貯金、不動産、有価証券、保険金などの資料を集め、一覧表にします。
  3. そのうえで、分け方の見通しと、生命保険金の非課税枠や配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例のような確認事項を並べます。

この順番なら、「申告が必要か」「資料はそろっているか」「特例の確認が必要か」を一つずつ確かめられます。逆に、いきなり申告書の作成から始めると、前提が固まっていない箇所で止まります。

まずは基礎控除を超えるかを見て、期限までの日付を押さえ、資料を一覧にしていくのが、自分で進めるときの基本です。途中で判断が難しい点が残るときは、相談窓口をご案内しています。

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