小規模宅地等の特例は、亡くなった方の自宅の敷地などについて、相続税の計算で使う土地の評価額を最大80%減額できる制度です。ただし、土地なら何でも使えるわけではありません。誰が引き継ぐのか、亡くなった時点でどう使っていたのか、申告までに分け方が決まるかによって結論が変わります。根拠は租税特別措置法69条の4です。まずは条件を大きく分けて見ていくと整理しやすくなります。
小規模宅地等の特例はどんな制度か
この特例は、相続税の負担を考えるときに、生活や事業の土台になっていた土地まで一律に評価すると影響が大きいため、一定の宅地について評価額を下げる仕組みです。対象になり得るのは、亡くなった方が住んでいた家の敷地、事業に使っていた土地、貸していた土地などです。
一方で、制度の名前だけで判断すると誤解しやすい点があります。特例の対象かどうかは、土地の種類だけでは決まりません。取得する人との関係や、その人が申告期限までどうしているかまで見ます。そのため、同じ自宅の敷地でも、配偶者が受け継ぐ場合と、別居の子が受け継ぐ場合では確認点が変わります。
また、特例が使えても、相続税の申告自体が必要かどうかは別に考えます。財産の合計が基礎控除額を超えないなら、そもそも相続税の申告が不要になることがあります。記事の途中に入る道具でも、基礎控除を超えるかの見当をつけられます。
条件を見るときの3つの視点
1. どの土地が対象か
最初に見るのは、亡くなった方がその土地を何に使っていたかです。自宅の敷地なのか、事業用なのか、貸していた土地なのかで区分が分かれます。使い方によって減額の範囲や確認点が違うため、固定資産税の通知だけで決めず、実際の利用状況も一緒に確かめます。
2. 誰が取得するか
次に重要なのが、土地を誰が相続するかです。居住用の土地では、配偶者、同居していた親族、いわゆる家なき子にあたる親族で見方が異なります。配偶者は確認点が比較的少ない一方、同居していた親族は同居の実態が問われます。家なき子にあたるかは、単に賃貸住宅に住んでいるだけでは足りず、一定期間の住まいの状況まで見ます。配偶者が取得する場合は、配偶者の税額の軽減もあわせて見ます。
相続人の範囲や法定相続分がまだ整理できていないときは、相続まるごと診断で、相続人・法定相続分・基礎控除額をまとめて確認できます。誰が受け継ぐかが固まらないと、この特例の見通しも立てにくくなります。
3. 申告期限までの状態
配偶者以外が取得する区分では、申告期限までその宅地を持ち続ける、住み続ける、事業を続けるといった条件が付くものがあります。亡くなった直後に売却したり、住む人が変わったりすると、適用できないことがあります。相続税の申告期限は10か月ですから、分け方の話し合いが長引きそうなら早めに日程を意識した方がよいでしょう。期限の全体像は相続税の申告期限は10か月、いつまでかで流れを確認できます。
居住用の土地で迷いやすい点
もっとも相談が多いのは、亡くなった方の自宅の敷地です。ここで見落としやすいのは、「同居していたか」を住民票だけで決めないことです。住所が同じでも実際には別々に生活していた、反対に住所は別でも介護のために同じ家で暮らしていた、ということがあります。実際の生活の様子を示せる資料も確認材料になります。
また、別居の親族が取得する場合でも、いわゆる家なき子として特例の対象になり得ることがあります。ただし、持ち家がないという一点だけでは足りません。過去の住まい方や、親族の家に住んでいたかどうかなど、細かな条件を順に見ます。思い込みで進めると判断を誤りやすい部分です。
亡くなった方が施設に入っていたケースも注意が必要です。施設に入ったから直ちに自宅の敷地ではなくなるとは限りません。入所前に住んでいたことや、自宅の使い方によっては、なお居住用として扱える場合があります。こうしたケースは、一つの事情だけで結論を出さず、資料をそろえて確認します。
先に基礎控除も確かめる
小規模宅地等の特例が気になるときでも、先に相続税の申告が必要かを見ておくと整理しやすくなります。基礎控除額は、3,000万円と600万円×法定相続人の数で計算します。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
財産の合計がこの基礎控除額を下回るなら、相続税の申告が不要になることがあります。逆に、基礎控除を超えそうなら、小規模宅地等の特例を使えるかで結論が変わることがあります。基礎控除の考え方は相続税の基礎控除、計算方法を確認で整理できます。
迷ったときはこの順で確認します
- 亡くなった方の土地を一覧にし、自宅・事業用・貸付用のどれかを分けます。
- 亡くなった時点で誰が住んでいたか、誰が使っていたかを確かめます。
- 誰がその土地を取得する予定かを決め、相続人の範囲と分け方を整理します。
- 申告期限の10か月までに、持ち続けるか、住み続けるかなどの条件に影響する予定がないかを見ます。
- 判断が分かれそうな事情があれば、早めに税務の相談窓口で資料を示して確認します。
この特例は効果が大きい一方で、条件を一つずつ外さず見る必要があります。とくに居住用の土地は、同居の実態や住まいの経過で結論が分かれます。分け方の話し合いが進まないときは、遺産分割協議書に書くことで確認項目を先にそろえておくと、必要な整理がしやすくなります。判断に迷う部分は、申告期限の前に相談窓口で確認して進めてください。
