遺産の中に自宅や土地があると、きれいに分けるのが難しいことがあります。そんなときに使われるのが代償分割です。これは、一人が不動産などを受け取り、その代わりにほかの相続人へ現金を支払って全体の受け取り方を整える方法です。名前は聞いたことがあっても、「現金は自分で用意するのか」「預貯金から出せるのか」で迷いやすいところです。ここでは、代償分割の基本と、話し合いで見落としやすい点を順に見ていきます。
代償分割とは何か
代償分割とは、遺産そのものを細かく分けにくいときに、一人がまとまった財産を取得し、その代わりにほかの相続人へお金を支払う分け方です。たとえば、自宅を売らずに配偶者や同居していた子が引き継ぎたい場面で使われます。そのまま分ける現物分割、売って分ける換価分割との違いは現物分割・代償分割・換価分割の違いで整理しています。
遺産分割は、財産の種類や数額、相続人それぞれの事情を考えて決めるものとされています(民法906条)。代償分割は、その考え方に沿って、公平に近づけるための方法の一つです。単に「不動産をもらう人が決まれば終わり」ではなく、その人が受け取り過ぎにならないよう現金で調整する点に特徴があります。
- 自宅は一人が受け継ぎ、ほかの相続人は代償金を受け取る
- 事業に使う建物や土地を一人にまとめて、経営の継続を優先する
- 売却すると困る財産を残しつつ、受け取りの偏りだけを整える
遺産に不動産が多いと、共有名義にしてそのまま持つ案も出ます。ただ、共有は売却や管理のたびに意見が分かれやすいため、先に相続した不動産を共有するデメリットを読んでおくと、代償分割と比べられます。
現金はだれがどう用意するのか
結論からいうと、代償分割では現金が必要になることが多いものの、必ずしも「亡くなった時点で手元に現金がそろっていなければできない」というわけではありません。大切なのは、だれが、どのお金から、いつ支払うのかを話し合いで決めることです。家族構成ごとの出発点は、記事の途中に出る法定相続分を調べるボタンでも確かめられます。
遺産の預貯金を充てる場合
遺産の中に預貯金があり、不動産を受け取る人以外へ回せるだけの資金があるなら、その預貯金を調整に使う形が考えられます。この場合は、相続人のうち一人が自分のお金を新たに出すというより、遺産全体の中で配分を整えるイメージです。
ただし、預貯金だけで全員の納得する配分になるとは限りません。不動産の受け取りが大きく、預貯金だけでは偏りが残ることもあります。そのときは、預貯金に加えて代償金を支払うのか、別の分け方にするのかを詰める必要があります。
自分の資金で支払う場合
一人が自宅や土地を単独で取得したい一方、遺産の預貯金だけでは調整しきれないときは、その人が自分の資金で代償金を用意する形があります。ここでいう現金は、必ずしも家に置いてあるお金という意味ではなく、支払える資金を確保できるかどうかで考えます。
反対にいえば、支払う見込みが立たないのに代償分割を選ぶと、あとで約束どおりに払えず争いになりかねません。分割払いにするなら、その内容まで書面に残すことが欠かせません。現金の用意が難しいなら、不動産を売って分ける方法も含めて比べたほうが進めやすい場面があります。住み続けるか売るかの選択肢は相続した実家を、住むか売るか空き家にするかで整理しています。
代償分割を選ぶ前に見ておきたい点
一人で引き継ぐ理由が共有されているか
代償分割は、不動産を一人にまとめる理由がはっきりしているとまとまりやすくなります。たとえば、今後も住み続ける人がいる、事業で使っている、売却すると生活に影響が出る、といった事情です。理由が曖昧なまま「とりあえず長男が持つ」と進むと、ほかの相続人が納得しにくくなります。
相続人の範囲や法定相続分を整理してから話し合うと、出発点のずれを減らせます。基本を先に押さえたいときは、法定相続分の計算がわかる早見表も参考になります。
過去の贈与や貢献の話が出ていないか
代償金の額は、単純に人数で割れば決まるとは限りません。亡くなった方から生前に大きな贈与を受けていた人がいる、長く介護や事業への協力をしてきた人がいる、という事情が出ると、受け取り方の話し合いは変わります。表面上は現金の用意の問題に見えても、実際には「何を前提に公平と考えるか」が争点になっていることがあります。
生前贈与が論点になりそうなら、特別受益とは?生前贈与の扱いを確認を見ておくと、なぜ金額の話がずれるのか整理しやすくなります。
決まったあとは書面に残す
代償分割は、口頭でまとまったつもりでも、あとから認識の違いが出やすい方法です。だれがどの財産を取得するのか、だれに、いくらの代償金を、いつまでに、どの方法で支払うのかまで、遺産分割協議書に具体的に書いておく必要があります。書き漏れが心配なら、遺産分割協議書に書くことで項目を順に点検できます。
話し合いが進まず、現金の出し方や金額の考え方で折り合わないときは、無理に結論を急がず、遺産分割がまとまらないときの進め方もあわせて確認してみてください。判断に迷う事情がある場合は、相談窓口をご案内しています。
