遺産分割の話し合いは、気持ちの整理がつかない時期に進めることも多く、思うようにまとまらないことがあります。意見が食い違っても、すぐに結論を急ぐ必要はありません。まずは何が止まっているのかを分けて見ていくと、次にすることがはっきりします。話し合いで決まらない場合には、家庭裁判所の手続きを使う道もあります。
遺産分割が進まないときに先に確かめること
遺産分割でもめているように見えても、実際には前提がそろっていないために話がかみ合っていないことがあります。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求できます(民法907条2項)。ただし、その前に確認できる点を整えるだけで、話し合いが動き出すことも少なくありません。
相続人と遺言書の有無をそろえる
最初に見直したいのは、誰が相続人になるのか、遺言書があるのかという出発点です。参加する人がそろっていないまま話を進めると、あとでやり直しになることがあります。相続まるごと診断を使うと、相続人や法定相続分、必要な手続きの順番をまとめて確認できます。遺言書が見つかったときは、その内容の確認が先になるため、遺言書の検認手続き、流れと注意点で、見つかった後の進め方を把握しておくと流れを追いやすくなります。まとまったあとで分け方を変えたくなった場合は遺産分割協議はやり直しできる?条件と進め方で、全員合意の要否と税金の扱いを確かめられます。
分ける財産の範囲を同じ資料で見る
次に、何を遺産として話し合うのかをそろえます。不動産、預貯金、有価証券、保険、借入れなどについて、手元の資料を一覧にしておくと、認識のずれが見えやすくなります。ある人は自宅だけを中心に考え、別の人は預貯金も含めて公平さを見ている、という食い違いはよくあります。評価額までその場で決める必要はありませんが、対象となる財産の抜け漏れはないかを先に確認しておくと、その後の話し合いが空回りしにくくなります。
話し合いが止まりやすい理由と整え方
遺産分割がまとまらない理由は、単に仲が悪いからとは限りません。基準が共有されていない、資料が不足している、希望が言葉になっていないなど、整理の不足で止まっている場合もあります。
- 誰が相続人かの認識がそろっていない
- 法定相続分を共通の基準として見ていない
- 自宅を残すのか、売るのかの希望が分かれている
- 通帳や登記事項証明書などの資料が十分に集まっていない
法定相続分は、最終的な分け方をそのまま決めるものではありませんが、話し合いの土台にはなります。法定相続分の計算がわかる早見表で取り分の基準を確認し、このページの途中に出てくる法定相続分を調べる道具も使いながら、まず同じ前提で話せる状態をつくると進めやすくなります。そのうえで、何を優先したいのかを一人ずつ言葉にして並べます。住み続けたいのか、早く換金したいのか、思い出の品を残したいのかで、望む分け方は変わるためです。
協議で決まらないときに考える手続き
前提をそろえても合意に至らないときは、当事者だけで結論を出そうと抱え込まないことも選択肢の一つです。話し合いが平行線のまま長く続くと、名義変更や解約の手続きも先に進めにくくなります。相続開始から10年を過ぎると、生前の贈与や介護の貢献を分け方に反映できなくなる決まりもあります(遺産分割の10年期限で変わること)。そうした場面では、家庭裁判所の調停という方法があります。
家庭裁判所の調停を使う場面
協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求できます(民法907条2項)。調停では、相続人同士が直接ぶつかり合う形ではなく、手続きの中で争点を整理していきます。連絡を取りにくい相続人がいる場合や、感情的になって話が前に進まない場合でも、論点を順に確認できる点が特徴です。申立てを考える段階では、戸籍、遺言書の有無、財産に関する資料など、手元にあるものをまとめておくと準備しやすくなります。申立てからの進み方と期間が変わる理由は遺産分割調停の流れと期間の見通しで整理しています。
調停の前に整理しておきたいこと
調停に進むとしても、何を求めたいのかが曖昧なままだと、資料を出しても話が深まりません。自宅を誰が引き継ぎたいのか、売却して分けたいのか、預貯金を先に整理したいのかなど、希望の順番を書き出しておくと見通しが立ちます。また、相手の主張のうち事実関係に争いがあるのか、それとも分け方の考え方が違うのかを分けておくことも役立ちます。事実の確認と希望の調整は別の作業なので、混ぜて話すと長引きやすいためです。
まとまったあとの書面づくりと次の手続き
合意できたら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。口頭での確認だけでは、あとで金融機関や法務局の手続きに使えないことがあります。誰がどの財産を取得するのか、不動産の表示や預貯金の特定に漏れがないかを一つずつ確かめてください。遺産分割協議書に書くことでは、書き漏らしになりやすい項目を順番に確認できます。不動産を一人が取得して現金で調整する形にしたときの書き方の注意は代償分割の記事で確認できます。
協議書ができたあとも、相続登記、預貯金の解約や名義変更、相続税の確認など、別の手続きが続きます。遺産分割だけに集中していると、ほかの手続きの準備が後回しになりがちです。話し合いが長引いている間も、戸籍の収集や財産資料の整理など、先に進められる部分はあります。どこで止まっているのかを見分け、順番に片づけていくことが近道です。進め方に迷う段階では、相談窓口を案内しているページも参考にしてください。
