遺産分割では、同じ財産でも分け方にいくつかの方法があります。よく出てくるのが、現物分割、代償分割、換価分割の3つです。名前が似ていて分かりにくいのですが、違いは「そのまま分けるのか」「一人が受け取って現金で調整するのか」「売ってから分けるのか」にあります。遺産分割は、財産の種類だけでなく、相続人それぞれの事情も踏まえて決める考え方です(民法906条)。まずは3つの特徴を押さえると、話し合いの土台を作りやすくなります。
3つの分け方の基本
現物分割は、財産を売らずに、そのまま誰が何を受け取るか決める方法です。代償分割は、たとえば自宅を一人が引き継ぎ、その代わりにほかの相続人へ現金を支払ってバランスを取る方法です。換価分割は、不動産などを売って現金にし、その売却後の資金を分ける方法をいいます。
| 分け方 | 内容 | 向く場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 財産をそのまま分ける | 預金や土地建物を分けやすいとき | 公平感が出にくいことがある |
| 代償分割 | 一人が取得し、ほかの相続人に現金で調整する | 自宅や事業用の財産を残したいとき | 支払う資金の準備が必要 |
| 換価分割 | 売却して現金を分ける | 財産をそのまま分けにくいとき | 売却まで時間がかかることがある |
それぞれが向く場面
現物分割が向くとき
預金は長男、不動産は配偶者のように、財産ごとに受け取る人を決めやすいなら、現物分割は進めやすい方法です。売却の手間がなく、亡くなった方の自宅に住み続けたい人がいる場合にも考えやすい形です。ただし、不動産を複数人の名義で持つと、後で売るときや管理するときに意見がまとまりにくくなることがあります。共有にする前に、相続した不動産を共有するデメリットで、起こりやすい支障を先に見ておくと判断しやすくなります。預貯金を分けるときの確認順序は預貯金の記事で整理しています。
代償分割が向くとき
自宅や事業で使う建物のように、一人がまとめて持ったほうが使いやすい財産では、代償分割が候補になります。住み続ける人や事業を続ける人がその財産を受け取り、ほかの相続人には現金で調整するため、利用を続けながら分け方の不公平を抑えやすい方法です。一方で、現金を用意できるか、支払う時期をどうするかが争点になりやすい面があります。代償金の支払いは、遺産分割協議書に「誰が誰に、いくらを、いつまでに支払う」と明記します。書いていないと、相続とは別の贈与として扱われるおそれがあります。考え方の細かな流れは、代償分割とは何か、現金の用意と進め方で確認できます。
換価分割が向くとき
不動産を誰か一人に持たせる理由が薄く、現金で分けたほうが納得しやすいなら、換価分割が合うことがあります。売却できれば持ち分の調整がしやすく、管理の負担を残しにくいのが利点です。ただし、すぐに買い手が見つかるとは限らず、売り出し価格や時期で意見が分かれることがあります。住んでいる人がいる不動産では、退去や引き渡しの段取りも先に話しておく必要があります。売却して利益が出ると、売った人に所得税・住民税がかかることも、分け方を決める前に見ておきたい点です。実家を住むか売るかの選択肢は相続した実家を、住むか売るか空き家にするかにまとめています。
選ぶ前に確認したいこと
どの方法が合うかは、財産の種類だけでは決まりません。民法906条は、遺産分割で相続人それぞれの年齢、職業、心身の状態、生活の状況などを考慮する考え方を示しています。実際には、次の点を並べてみると整理しやすくなります。
- 自宅や土地を、これから使い続ける人がいるか
- 現金や預金がどの程度あるか
- 不動産を売ることに全員が前向きか
- 名義を分けた後の管理を誰が担うか
- 公平さを何で測るか、相続人の考えがそろっているか
家族構成によって、そもそもの分け方の目安は変わります。記事の途中に出てくる「法定相続分を調べる」を使うと、話し合いの出発点を確かめられます。あわせて、法定相続分の計算がわかる早見表を見ておくと、誰がどの立場で話し合うのかを整理できます。
また、介護の負担や生前贈与があったかどうかで、受け取り方への納得感が変わることもあります。そうした事情があるときは、最初に全員で共有しておくほうが、分け方の選択で行き違いを減らせます。
話し合いをまとめる進め方
進める順序は、最初に財産を一覧にし、その次に「残したい財産」と「売ってもよい財産」を分けて考える方法が分かりやすいです。たとえば、自宅は残したいが、使う予定のない土地は売却も検討する、というように分けていくと、現物分割・代償分割・換価分割を組み合わせられます。
- 財産の内容を確認する
- 誰が使い続ける財産かを整理する
- そのまま分けるもの、現金で調整するもの、売却を考えるものに分ける
- 合意した内容を文書にまとめる
決まった内容は、後で見返しても意味が変わらないように残しておく必要があります。文書に入れる項目は、遺産分割協議書の書き方と確認事項で先に洗い出せます。話し合いが止まってしまったときは、遺産分割がまとまらないときの進め方も参考になります。
3つの分け方に優劣があるわけではなく、財産の内容と相続人の事情によって向き不向きが変わります。まずは「残したい財産は何か」「現金で調整できるか」「売却に納得できるか」を順に確認し、まとまりにくいときは相談窓口をご案内しています。
