遺産分割協議書は、相続人どうしで決めた遺産の分け方を文書にしたものです。預貯金の解約や不動産の名義変更で求められることが多いため、内容があいまいだと手続きが止まりやすくなります。ここでは、何を書けばよいか、書く前に何を確かめるか、まとまらないときの進め方を順に整理します。
遺産分割協議書は何のために作るのか
亡くなった方の遺産は、相続人どうしの話し合いで分け方を決められます(民法907条1項)。その結果を文書にしたものが遺産分割協議書です。だれが何を受け継ぐのかをはっきり示し、その後の名義変更や払戻しの場面で使います。
遺産分割協議書が出番になるのは、主に次のような場面です。
- 預貯金の払戻しや解約を進めるとき
- 不動産の名義変更をするとき
- 株式や自動車などの名義を書き換えるとき
- 相続人のあいだで決めた内容を後で確かめたいとき
逆に、文書があっても、相続人が漏れていたり、財産の特定が足りなかったりすると、提出先で確認が入り、そのままでは進まないことがあります。まずは分け方の前提をそろえるところから始めます。全体の流れを先に見たいときは、相続手続きの順番一覧と進め方で、戸籍の収集から名義変更までの順番を追えます。いったん作った協議書を直したくなったときの考え方は遺産分割協議はやり直しできる?条件と進め方にまとめています。
書き始める前に確認したい2つのこと
相続人をもれなく確かめる
協議書は、相続人全員が参加して内容を確認することが前提です。戸籍をたどって、だれが相続人になるのかを先に確定させます。配偶者の有無、子の有無、すでに亡くなっている家族がいるかで顔ぶれが変わるため、「思っていたより人数が多かった」ということもあります。相続人の範囲や法定相続分を整理したいときは、相続まるごと診断を使うと、相続人・法定相続分・基礎控除などが一度に並びます。
話し合いでは法定相続分どおりに分けるとは限りません。ただ、基準を知らないままだと比較がしにくいため、まずは法定相続分の計算がわかる早見表で基本の分け方を見ておくと、協議の土台を作りやすくなります。
遺産を一覧にして、書ける形まで整える
次に、何を分けるのかを一覧にします。不動産、預貯金、有価証券、自動車、未払いの税金や借入れなど、プラスの財産とマイナスの財産の両方を見ます。協議書では「自宅一式」「預金全部」のような書き方より、登記事項証明書や通帳の表示に合わせて特定できる形にしたほうが、その後の手続きにつながります。
この段階で資料がそろっていないと、協議書を書いてから修正が増えがちです。亡くなった方の氏名、最後の住所、亡くなった日、各財産の名義や番号など、本文に入れるための情報を先に集めておきます。財産が多いときは、先に一覧表を作ってから本文に落とし込むと、書き漏れを見つけやすくなります。
遺産分割協議書の書き方
最初に入れる基本項目
書式は一つに決まっていませんが、本文には少なくとも次の内容を入れます。
- 亡くなった方を特定する情報
- 相続人全員の氏名と住所
- 相続人どうしで協議したこと
- だれがどの財産を取得するか
- 協議が成立した日
冒頭では、亡くなった方について「だれの遺産を分ける文書なのか」が分かるように書きます。そのうえで、相続人全員で協議し、下記のとおり分割するという流れにすると読みやすくなります。本文はパソコンで作っても差し支えありませんが、署名や押印の扱い、印鑑証明書の要否は提出先ごとに確かめてください。
財産はあいまいにせず一つずつ書く
いちばん注意したいのは、財産の書き方です。不動産なら、土地と建物を分け、所在や地番、家屋番号などを登記事項証明書どおりに記します。預貯金なら、金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号を入れます。有価証券や自動車も、銘柄や登録番号など、第三者が見て同じものを指せる表示でそろえます。
「長男が不動産を取得する」「預金は長女が相続する」のようにまとめて書くより、財産ごとに行を分けたほうが見落としを防げます。ある相続人が不動産を受け継ぎ、ほかの相続人に金銭を支払う形にするなら、支払う相手、支払う金額、期限、方法まで本文で分かるようにしておきます。後から見つかった財産の扱いも、別途協議するのか、特定の相続人が取得するのかを書いておくと、追加の話し合いが必要か判断しやすくなります。
書き漏れが心配なときは、遺産分割協議書に書くことで33の確認項目を見ながら整える方法があります。本文に入れる内容を順に点検でき、抜けやすい項目を洗い出せます。
作成後の確認と、話し合いがまとまらないとき
協議書ができたら、相続人全員で内容を読み返し、氏名の表記ゆれ、住所の古さ、財産の番号違いがないかを見ます。提出先によって必要書類や原本の扱いが異なるため、戸籍、印鑑証明書、登記事項証明書、通帳の写しなどを合わせて確認しておくと、その後の段取りを組みやすくなります。
話し合いで分け方が決まらないときは、無理に文案を完成させるより、争点を分けて整理します。だれが相続人かで意見が分かれているのか、財産の把握が足りないのか、不動産の取得者で折り合わないのかによって、必要な資料も変わるためです。相続人どうしの協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を求めることができます(民法907条2項)。文書の形だけ先に整えるより、何が決まっていないのかをはっきりさせるほうが進めやすくなります。
遺産分割協議書は、見本をそのまま写すより、相続人と財産を正確に書き分けることが中心です。だれが何を受け継ぐかが一読して分かる形になっていれば、その後の手続きを進める土台になります。
