亡くなった方の家や土地を、相続人どうしで持分を分けて持つ方法は、一見すると公平に見えます。ただ、不動産は預貯金のようにきれいに分けにくいため、共有のまま残すと、その後の管理や処分で何度も話し合いが必要になります。相続した不動産を共有にする前に、何が負担になりやすいのかを落ち着いて確認しておくと、分け方を考えやすくなります。
相続した不動産の共有とは何か
相続人が複数いるとき、遺産分割が終わるまで、相続財産は相続人全員の共有になります(民法898条)。そのうえで、話し合いの結果として不動産を持分で分ければ、遺産分割の後も共有が続きます。
ここでいう共有は、それぞれが建物の一部だけを自由に使えるという意味ではありません。各共有者は、自分の持分に応じて共有物の全部を使用できます(民法249条)。そのため、実際には一人が住んでいる家でも、権利関係はもっと複雑です。住んでいない相続人にも持分があり、利用の仕方や費用負担について調整が必要になることがあります。
また、共有はそのまま固定される関係ではありません。共有者は、話し合いで決まらなければ裁判所に共有物の分割を求めることができます(民法258条)。今は全員が納得していても、後で考えが変われば、共有を続ける前提が崩れることがあります。
相続した不動産を共有にする主なデメリット
- 売却や活用のたびに意見をそろえにくい
家を売る、貸す、建て替える、空き家として維持するなど、不動産は持ち続けるだけでも判断の場面が出てきます。共有だと、その都度、関係者の考えを合わせる必要があり、話が前に進まないことがあります。
- 管理費や修繕費の分担で行き違いが起こる
固定資産税、火災保険、草刈り、修繕など、持っているだけで費用や手間がかかります。誰が立て替えるのか、どこまで負担するのかが曖昧なままだと、不満が残ります。
- 使っている人と使っていない人で温度差が出る
一人が住み続ける場合、住んでいる人は手放したくない一方で、住んでいない人は売却を望むことがあります。相続直後は決め切れなくても、数年後に事情が変わって対立が表に出ることは珍しくありません。
- 次の相続で権利関係がさらに複雑になる
共有者の一人が亡くなると、その持分がさらに相続されます。すると共有者の数が増え、連絡先の把握や意思確認だけでも負担が重くなります。最初は家族のあいだで整理できていても、世代が変わると話し合いの難しさが増します。
共有のままで困りやすい場面
空き家をどうするか決められないとき
誰も住んでいない家は、早めに方針を決めたい財産です。しかし、思い出があるから残したい人と、維持費を抑えたい人では考えが分かれます。共有のままだと、結論が出ないまま時間だけが過ぎ、庭木の管理や建物の傷みへの対応が後回しになりがちです。実家が空き家になったときの選択肢は相続した実家を、住むか売るか空き家にするかにまとめています。
一人だけが使っているとき
相続人の一人が住んでいる、荷物を置いている、親族に使わせているといった場合は、ほかの共有者が納得しているかを確かめておかないと、後で不公平感につながります。持分がある以上、使っていない側にも言い分があります。
将来の整理を先送りするとき
「とりあえず共有でいい」と決めると、その時点ではまとまりやすく見えます。ただ、共有者は話し合いで決まらなければ裁判所に分割を求めることができるため(民法258条)、将来も同じ形で続くとは限りません。今の結論が仮置きになっていないか、確認しておきたいところです。
話し合いの出発点が曖昧なときは、途中に表示される法定相続分を調べる道具や、法定相続分の計算がわかる早見表で、分け方の土台を確かめておくと整理しやすくなります。
共有を避けたいときの進め方
まず確認したいのは、遺言書の有無と、誰が相続人になるかです。そこが定まらないまま共有にすると、後で前提から見直すことになりかねません。全体の順番に迷うときは、相続まるごと診断を見ると、相続人や法定相続分、手続きの流れをまとめて確認できます。
そのうえで、不動産を共有にしない分け方としては、主に次の考え方があります。
- 相続人の一人が不動産を取得し、ほかの財産との組み合わせで全体のバランスを取る
- 不動産を売却し、売却後の代金を分ける
- 土地と建物、あるいは不動産以外の財産も含めて、取得する人を分ける
どの方法が合うかは、住む予定があるか、空き家か、預貯金など他の財産があるかで変わります。共有は公平に見えますが、後の管理まで考えると別の分け方のほうが合うこともあります。一人が不動産を受け取り、ほかの相続人へ現金で調整する方法は代償分割とは何か、現金の用意と進め方にまとめています。3つの分け方の違いは現物分割・代償分割・換価分割の違いで比べられます。
なお、共有にする場合でも相続登記は必要です。不動産を取得したと知った日から3年以内に申請します(不動産登記法76条の2)。期限日と必要書類は相続登記チェックで確かめられます。
話し合いが進まないときは、遺産分割がまとまらないときの進め方や、遺産分割調停の流れと期間の見通しを確認すると、次の手順をつかめます。合意できたら、内容を書面に残します。書き漏らしを防ぎたいときは、遺産分割協議書に書くことで確認項目を見ておくと、作り直しになりやすい点を拾えます。
不動産を共有にするか迷ったときは、今の分けやすさだけでなく、数年後の管理や処分まで思い浮かべることが欠かせません。判断に迷う事情がある場合は、相談窓口の案内も利用できます。
