贈与税の配偶者控除とおしどり贈与の条件

長年連れ添った配偶者に自宅を渡しておきたい、と考えたときに名前が挙がるのが「おしどり贈与」です。贈与税には年110万円の基礎控除がありますが、自宅のように額の大きい財産には足りません。そこで使われるのが、婚姻20年以上の夫婦に限って認められる贈与税の配偶者控除です。ここでは、使える条件、申告が要る理由、相続対策として見るときの注意点を順に整理します。

おしどり贈与とは何か

おしどり贈与は、夫婦の間で自宅に関する贈与をするときの贈与税の配偶者控除の通称です。正式には、婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産、またはその購入資金の贈与を受けた場合に使える制度で、根拠は相続税法21条の6です。

この制度を使うと、基礎控除110万円とは別に、最高2,000万円まで控除できます。自宅そのものを贈与する場合だけでなく、これから住む家を買うためのお金を受け取る場合も対象になります。

ただし、名前の印象だけで使える制度ではありません。対象になる財産が限られており、住み始める時期や申告の要否にも決まりがあります。毎年の贈与で使う考え方は、生前贈与110万円と暦年課税の基本で違いを確認できます。

使える条件を順に確認する

婚姻期間が20年以上あること

もっとも基本になる条件は、夫婦の婚姻期間です。内縁関係ではなく、法律上の婚姻が20年以上続いていることが前提です。年数は戸籍で確かめます。

自宅そのもの、または購入資金の贈与であること

対象になるのは、住むための国内の不動産か、その取得のためのお金です。預貯金を渡すだけでは足りず、居住用の目的が必要です。賃貸用や投資用の不動産は、この制度の対象ではありません。

翌年3月15日までに住み、住み続けること

贈与を受けた配偶者が、その家に実際に住むことも条件です。期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。その日までに住み始め、その後も住み続ける見込みであることが要件になります。購入資金の贈与なら、その日までに家を取得して住む流れになります。名義だけ移して実際には住まない場合は、制度の対象から外れます。

申告が必要になること

この制度は、控除を使えば贈与税の負担が出ない場合でも、申告をして初めて適用されます。自動では使われません。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、戸籍謄本や登記事項証明書などを添えて贈与税の申告をします。同じ配偶者からの贈与で使えるのは一生に一度なので、使う時期も含めて考える必要があります。

ほかの贈与制度との違いは、相続時精算課税の改正、110万円はどう変わったかもあわせて見ると整理できます。

相続対策として見るときの注意点

相続対策として大きいのは、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される仕組みの中で、この控除を受けた部分(2,000万円まで)は加算されない点です(相続税法19条2項)。亡くなる直前の贈与であっても、控除分は相続財産に戻されません。生前贈与の加算の仕組みは生前贈与の7年加算、改正で何が変わるかにまとめています。

一方で、自宅を配偶者に移せばいつでも有利になるとは限りません。贈与で名義を移すときの登録免許税は、相続で移すときより税率が高く、相続ではかからない不動産取得税もかかります。不動産の価値だけを見て決めるのではなく、手続き全体の費用で考える必要があります。不動産を生前に贈与するときの利点と注意点の全体は不動産の生前贈与、メリットとデメリットで整理しています。

また、相続のときには、配偶者に別の税負担の軽減があります。配偶者が相続で取得した財産は、1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかかりません(相続税法19条の2)。詳しくは配偶者の相続税、1億6,000万円の軽減とはで確認できます。この軽減があるため、税だけで見れば急いで贈与する理由がない家庭も少なくありません。生前に自宅を移すか、相続まで持つかは、家族構成やほかの財産との兼ね合いで見方が変わります。贈与と遺言のどちらから考えるかは生前贈与と遺言、どちらから考えるかにまとめています。

さらに、のちに遺産の分け方を話し合う場面では、生前の贈与が話題になることがあります。自宅の贈与だけを先に進めるより、相続人の範囲や全体の分け方まで見渡しておくと、あとで考え直さずに済みます。記事の途中に出てくる相続の備えチェックも、見落としやすい項目の整理に使えます。

迷ったときの進め方

  1. 婚姻期間が20年以上あるかを戸籍で確かめる
  2. 贈与するのが自宅そのものか、購入資金かをはっきりさせる
  3. 贈与を受けた配偶者が翌年3月15日までに住み、住み続ける予定を確認する
  4. 名義変更の手続と、贈与税以外の費用も含めて考える
  5. 相続のときの配偶者の軽減と比べてから、申告の準備に入る

夫婦の間の贈与は感情面の納得が得やすい一方で、税金と手続は制度ごとに分かれています。自宅の贈与だけでなく、相続人や基礎控除、今後の手続の順番まで見直したいときは、相続まるごと診断で全体像を確かめられます。

判断に迷うのは、家の名義だけでなく、ほかの財産の持ち方や遺言の有無が関わるためです。申告書の作成や評価の判断まで一人で進めるか迷ったら、相談窓口をご案内しています。

この記事の根拠

  • 法令 相続税法 e-Gov法令検索 確認日 2026-09-07

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