孫に生前贈与をしていたとき、「その贈与は相続税に加算されないのか」が気になる方は多いと思います。結論からいうと、孫だから一律に加算されないわけではありません。分かれ目になるのは、孫が亡くなった方の相続や遺言による受け取りに関わるかどうかです。まずは、相続税法19条の考え方を土台に、判断の順番を整理していきます。
孫への生前贈与が加算されないのはどんなときか
条文では、相続または遺贈により財産を取得した人が、亡くなった方から相続開始前の一定期間内に受けた贈与は、相続税の計算上、その相続財産に加算するとされています(相続税法19条)。このため、加算されるかどうかは「孫であること」だけでは決まりません。孫が相続や遺言による受け取りをしていないなら、原則としてこの加算の対象になりません。
| 孫の立場 | 生前贈与の加算 | 見方 |
|---|---|---|
| 生前贈与だけを受け、相続や遺言による受け取りがない | 原則として加算されない | 相続税法19条の対象者に当たらないためです。 |
| 相続人として財産を受ける | 加算されうる | 亡くなった方から受けた贈与の時期を確認します。 |
| 遺言で財産を受ける | 加算されうる | 相続人でなくても、遺言による取得があると確認が必要です。 |
| 生命保険金の受取人になっている | 加算されうる | 保険金は相続で取得したものとみなされるため、相続人でなくても対象に入ります。 |
なお、加算の対象期間は、2024年1月1日以後の贈与から3年から7年へ段階的に延長されています。もっとも、延長された4年分については合計100万円まで加算されません。ここでいう100万円は、加算される立場の人について使う数字であり、孫なら無条件で差し引けるという意味ではありません。
孫でも加算されることがある理由
誤解されやすいのは、「孫は相続人ではないことが多い」という話と、「だから生前贈与は必ず加算されない」という話を同じにしてしまう点です。実際には、孫でも相続や遺言による受け取りが生じる場面があります。
子が先に亡くなっていて、孫が代わって相続人になるとき
亡くなった方の子がすでに亡くなっていると、孫がその子に代わって相続人になることがあります。この場合、孫は相続で財産を受ける立場になるため、亡くなった方から受けていた贈与が相続税法19条の確認対象に入ります。
養子になっているときや、遺言で財産を受けるとき
孫が養子になっていれば、相続人として受け取る可能性があります。また、相続人でなくても、遺言で財産を受ければ確認が必要です。家族関係が入り組んでいるときは、誰が相続人になるかを先に確かめたほうが流れをつかめます。相続まるごと診断では、相続人・法定相続分・基礎控除をまとめて確認できます。
生命保険金の受取人になっているとき
見落としやすいのが生命保険です。亡くなった方が保険料を払っていた保険の死亡保険金を孫が受け取ると、その保険金は相続で取得したものとみなされます。孫が相続人でなく遺言もなくても、保険金を受け取った時点で「相続または遺贈により財産を取得した人」に当たり、それまでの贈与が加算の対象に入ります。孫を受取人にしている保険があるなら、贈与の整理と一緒に見ておきます。
110万円の贈与なら加算されない、とは限りません
もう一つ混同しやすいのが、贈与税の110万円の基礎控除です。これは贈与税の話であり、相続税の加算とは別に考えます。年間110万円以下で贈与税の申告が要らない場合でも、その孫が相続や遺言で財産を受けるなら、相続税法19条の加算対象になることがあります。
反対に、110万円を超える贈与であっても、その孫が相続や遺言による受け取りをしていないなら、この加算の場面には直結しません。まずは、生前贈与110万円と暦年課税の基本で贈与税の土台を押さえ、そのうえで生前贈与の7年加算、改正で何が変わるかを見比べてください。
なお、孫への贈与で相続時精算課税を選んでいる場合は、ここまでの話とは仕組みが違います。精算課税で贈与した分は、期間に関係なく相続税の計算に取り込まれます。選んだ覚えがあるなら、相続時精算課税の改正、110万円はどう変わったかで扱いを確かめてください。
加算されるか確かめるときの順番
判断を急ぐより、次の順で事実を並べると見落としが減ります。生前の整理であれば、本文の途中にある相続の備えチェックも使えます。親に聞いておくことや、先に決めておくことを確認する入口になります。
- 孫が相続人かどうかを確かめる
- 遺言で財産を受けるか、生命保険金の受取人かを確認する
- 亡くなった方からの贈与の日付を古いものから並べる
- 2024年1月1日以後の贈与があるかを見て、7年への延長と100万円の扱いを確認する
- 相続時精算課税を選んだ贈与がないかを申告書の控えで確かめる
手元にある資料としては、贈与契約書、通帳の入出金、振込記録、贈与税の申告書控えなどが役立ちます。名義だけ孫になっていて、実際に孫が自由に使っていなかったお金は、別の論点になることがあります。書類だけで決めきれないときは、受け取り方の事実関係まで含めて整理しておくと、その後の確認が進めやすくなります。
「生前贈与の加算」と「2割加算」は別の話です
検索では「孫 相続税 加算されない」と出てきますが、ここでいう加算には二つあります。一つは、ここまで見てきた生前贈与を相続財産に加える話です。もう一つは、相続税額そのものに関わる2割加算です。孫が遺言や養子縁組で財産を受けると、子に代わって相続人になった場合を除き、その孫の相続税額は2割増しになります(相続税法18条)。前者で対象外でも後者がかかる、という組み合わせはありませんが、前者で対象になる孫は後者も同時に見ることになります。違いが気になるときは、相続税の2割加算とは?孫と兄弟の扱いを分けて読んでください。
孫への生前贈与が相続税に加算されるかどうかは、贈与の有無だけでは決まりません。誰がどの形で財産を受けるのか、いつ贈与が行われたのかを順に確かめ、迷うときは相談窓口の案内も確認してください。
