生前贈与を始めるとき、最初に決めるのが課税方式です。暦年課税と相続時精算課税の2つがあり、一度選ぶと後戻りできない部分があるため、始める前に違いを押さえておく必要があります。2024年からは相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができ、前提が変わりました(相続時精算課税の改正で110万円はどう変わったか)。
暦年課税
何も手続きをしなければ、贈与は自動的にこちらで扱われます。受け取る人1人につき年間110万円までは贈与税がかかりません(租税特別措置法70条の2の4)。超えた分に税率をかけて計算します。
特徴は、時間をかけるほど効いてくることです。毎年、複数の人へ渡していけば、非課税の枠を人数分・年数分だけ使えます。
一方で、相続人へ贈与した分は、亡くなる前の一定期間分が相続税の計算に加算されます(相続税法19条)。この期間は改正で段階的に延長されており、直前の贈与ほど加算されて効果が薄くなります。早く始めることが前提の方式です。
相続時精算課税
一定の年齢要件を満たす親や祖父母から、お子さまやお孫さんへの贈与について選べる制度です(相続税法21条の9)。選ぶには税務署への届出が必要です。
特徴は次のとおりです。
- 累計2,500万円まで贈与税がかかりません。超えた分には一律の税率がかかります。
- 加えて、年110万円の基礎控除が使えます。この基礎控除の範囲内で贈与した分は、相続のときに加算されません。
- 2,500万円の枠を使って渡した分は、相続のときに相続財産へ持ち戻して相続税を計算します。税金が消えるのではなく、先送りされる仕組みです。
選ぶと戻れない
いちばん重要な注意点です。相続時精算課税を選ぶと、同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ戻すことはできません。父からの贈与でこれを選んだ場合、父からの贈与は以後ずっとこの方式になります。母からの贈与は別に判断できます。
どう考えるか
金額や税額はご家庭ごとに変わるため、ここでは考え方だけを示します。
- 時間がある場合は、暦年課税を長く続けるほうが枠を多く使えます。渡す相手が複数いるほど効きます。
- まとまった額を、早い時期に渡したい事情がある場合は、相続時精算課税が向くことがあります。住宅の取得や事業の承継など、いま必要という場面です。
- 値上がりが見込まれる財産は、贈与時の価額で相続財産に持ち戻すため、精算課税が有利にはたらく場合があります。逆に値下がりすれば不利になります。
そもそも相続税がかかるかを先に見る
相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えなければ、相続税はかかりません(相続税法15条)。この範囲に収まるご家庭では、相続税を減らすための贈与を急ぐ必要がありません。法定相続人の数え方で基礎控除額が変わるため、まずそこを確かめます。
ご自身の場合に基礎控除がいくらになり、財産のおおよその合計が超えそうかは、相続税のページで確かめられます。入力した内容はどこにも送信されません。
このサイトで出せないこと
どちらの方式が有利かは、財産の中身、渡す相手の人数、渡す時期、相続までの年数によって変わります。不動産や自社株が絡む場合は評価の判断も必要になります。このサイトでは税額の計算は行いません。金額の判断が必要な場面では、相談窓口をご案内しています。不動産を渡す場合に特有の注意点は不動産の生前贈与、メリットとデメリットにまとめています。
贈与そのものの進め方は生前贈与の始め方にまとめています。