遺言書は、書いてあれば何でも通るわけではありません。形式が条文で決まっていて、そこを外すと内容にかかわらず効力を持ちません。ここでは自筆証書遺言を中心に、どこで無効になりやすいかを整理します。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言は、遺言をする方が全文・日付・氏名を自分で書き、押印することが要件です(民法968条)。この4つのうち1つでも欠けると無効になります。
- 全文の自書 — 本文をパソコンで作ったものや、他人が代筆したものは無効です。
- 日付 — 年月日が特定できる必要があります。「令和7年3月吉日」のように日が特定できない書き方は無効とされています。
- 氏名 — 本人が特定できることが必要です。
- 押印 — 実印である必要はありませんが、押印そのものが欠けていると無効です。
財産目録だけは例外
本文は自書が必要ですが、添付する財産目録についてはパソコンで作成したり、通帳や登記事項証明書のコピーを添えたりできます。ただし、目録の各ページに署名と押印が必要です。ここを忘れると、その目録の部分が無効になります。
形式以外で問題になるところ
形式を満たしていても、次のような場合には効力が争われます。
- 書いた時点で判断能力がなかった — 認知症が進んだ状態で書かれた遺言書は、有効性が争われやすい部分です。診断書や介護記録が残っていると、後の判断材料になります。
- 誰かに書かされた — 本人の意思によらない遺言は効力を持ちません。
- 財産や相続人の特定が曖昧 — 「自宅は長男に」だけでは、どの不動産か特定できず、登記の手続きで止まることがあります。地番や口座番号まで書かれているかが分かれ目になります。
3つめは無効というより「使えない」問題ですが、実務ではこれがいちばん多く起こります。書き方が曖昧だと、結局は相続人全員で話し合うことになります。
訂正の仕方にも決まりがある
書き間違えた箇所を訂正するときは、変更した場所を示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印する必要があります。二重線で消して書き直しただけでは、その訂正が認められません。訂正が必要になったら、書き直したほうが確実です。
形式で失敗しない方法
形式の不備を避けたい場合、方法は2つあります。
1つは公正証書遺言にすることです。公証人が関与して作成するため、形式面で無効になることがありません。家庭裁判所の検認も不要です。
もう1つは法務局の保管制度を使うことです。自筆証書遺言を法務局に預ける仕組みで、預けるときに形式面の確認を受けられます。紛失や書き換えの心配もなくなり、検認も不要になります。ただし、確認されるのは形式だけで、内容が有効かどうかまでは保証されません。預ける前後に確かめることは自筆証書遺言の保管制度を法務局で確認で整理しています。
無効だった場合はどうなるか
遺言書が無効と判断された場合、遺言が無かったものとして、相続人全員で分け方を話し合うことになります。法律が定める割合が話し合いの出発点になります(民法900条)。
ご自身の場合に誰が相続人で、法律ではどれだけ受け取ることになるかは、相続まるごと診断で確かめられます。話し合いで決めることになった場合の進め方は、遺産分割のページに、決まったあとの協議書の書き方は別の記事にまとめています。